技術事例

池状構造物の耐震計算例
応答変位法によるL1・L2照査

本ページでは、浄水場・配水池等に多く見られる池状鉄筋コンクリート構造物を対象に、 応答変位法による耐震検討の流れを整理します。地盤応答変位、躯体慣性力、 内水の動水圧、地盤ばねを考慮し、地震動レベル1および地震動レベル2に対する 構造安全性を確認します。

対象構造物池状RC構造物
検討方法応答変位法
照査区分L1・L2地震時
主な対象施設浄水場・配水池

1. 検討対象の概要

池状構造物は、側壁・中壁・底版・頂版等で構成される箱型の鉄筋コンクリート構造物です。 地中に設置される場合、地震時には構造物自身の慣性力だけでなく、周辺地盤の応答変位、 地盤ばね、土圧、水圧、動水圧などを組み合わせて評価する必要があります。

本計算例では、断面A-Aを検討対象断面として平面骨組みモデルに置換し、 応答変位法により地震動レベル1および地震動レベル2に対する耐震検討を行います。

池状構造物の平面モデル
平面図:池状構造物の検討対象イメージ
池状構造物の断面モデル
断面図:検討断面および地盤モデル
項目内容
構造形式鉄筋コンクリート造の池状構造物
検討断面断面A-A
解析モデル平面骨組みモデル
検討方法応答変位法
照査対象地震動レベル1、地震動レベル2
地震時作用躯体慣性力、地盤の応答変位、内水の動水圧

2. 地震時に考慮する主な作用

1. 躯体の慣性力

構造物重量に設計水平震度を乗じて、地震時に構造物へ作用する慣性力を考慮します。 L1・L2で水平震度の考え方が異なるため、設計条件に応じた整理が必要です。

2. 地盤の応答変位

表層地盤の固有周期、せん断波速度、地盤条件をもとに、深度方向の地盤変位分布を算定します。 応答変位法では、この地盤変位が重要な入力条件となります。

3. 内水の動水圧

水槽内の水は地震時に構造物へ付加的な水平作用を与えます。 水深、設計水平震度、水槽長さ等を条件として、動水圧分布を設定します。

3. 応答変位法による検討フロー

設計条件の整理

構造寸法、地盤条件、土被り、常時荷重、内水条件、材料強度、配筋条件を整理します。

地盤特性の設定

N値、せん断波速度、表層地盤厚、基盤位置を確認し、表層地盤の固有周期を算定します。

地震時作用の算定

設計水平震度、地盤応答変位、躯体慣性力、地震時動水圧を算定し、構造解析用の荷重条件を作成します。

平面骨組みモデルの作成

側壁・中壁・底版・頂版を梁要素としてモデル化し、地盤ばねおよび強制変位を設定します。

L1地震時照査

L1地震時は、主として許容応力度法により、鉄筋応力度、コンクリート圧縮応力度、せん断応力度を確認します。

L2地震時照査

L2地震時は、部材の剛性低下、曲げ破壊モード、せん断耐力、靱性を確認し、構造安全性を評価します。

4. 設計条件

4.1 地盤条件

検討対象地盤は2層系地盤とし、表層地盤のせん断弾性波速度をN値から算定します。 本例では、表層地盤厚 H = 15.5m、表層地盤のN値 N = 15 として整理します。

Vs = 122 × N^0.0777 Vs = 122 × 15^0.0777 = 151 m/s

4.2 常時荷重

荷重項目計算式条件・備考
上載荷重w1 = 1.0 tf/m²上載荷重として考慮
躯体重量D = A × γcγc = 2.5 tf/m³
上載土圧Pv = γ × h1γ = 1.8 tf/m³
土圧Ph = K0 × (Σγ・h + w1)K0 = 0.5
内水圧Pw = γw × h2γw = 1.0 tf/m³、h2 = 11.7m

4.3 使用材料

材料仕様特性値
コンクリート呼び強度 210 kgf/cm²fck = 210 kgf/cm²
鉄筋SD345fyk = 3,500 kgf/cm²

5. 地震時作用の算定

5.1 表層地盤の固有周期

TG = 4 × H / Vs TG = 4 × 15.5 / 151 = 0.41 s

5.2 設計水平震度

区分基準値・計算式結果
地震動レベル1 地表面Kh01 = 0.25-
地震動レベル1 基盤面K'h01 = 0.15-
躯体重心深さ L1Kh1w = Cz{K'h01 + (Kh01 - K'h01) × Hw/H}0.19
地震動レベル2 地表面Kh2 = 0.80-
地震動レベル2 基盤面K'h2 = 0.50-
躯体重心深さ L2Kh2w = 0.50 + (0.80 - 0.50) × 6.86 / 15.50.63

5.3 地盤の応答変位

地震動レベル1: Uh(x) = (2 / π²) × Sv × TG × K'h1 × cos(πx / 2H) = 0.910 × cos(πx / 31.0) 地震動レベル2: Uh(x) = (2 / π²) × Sv' × TG × cos(πx / 2H) = 4.154 × cos(πx / 31.0)
節点x(m)Uh L1(cm)Uh L2(cm)
11.30.904.12
21.60.904.10
32.60.884.01
43.60.853.88
54.60.813.71
65.40.783.55
75.90.753.43
86.40.733.31
97.60.652.98
108.60.592.67
119.80.502.27
1210.40.452.05
1311.00.401.83
1412.10.311.40
1513.20.210.96
1614.30.110.50
1714.90.060.25
1815.50.000.00

5.4 地震時動水圧

内水の地震時動水圧はHousner式に基づいて算定します。 本例では、水深 H = 11.7m、水の単位体積重量 γw = 1.0tf/m³、 長方形水槽の長さの1/2として l = 14.0m を用いています。

p(y) = √3 × Khw × γw × H × { (y/H) - 1/2 × (y/H)² } × tanh(√3 × l/H) p(y):地震時動水圧 Khw:躯体重心深さにおける設計水平震度 H:水深 11.7m γw:水の単位体積重量 1.0tf/m³ y:水面からの深さ l:長方形水槽長さの1/2 = 14.0m
節点y(m)p(y) L1p(y) L2
30.00.000.00
41.00.311.01
52.00.581.93
62.80.792.61
73.30.903.00
83.81.013.36
95.01.254.16
106.01.424.72
117.21.595.27
127.81.665.50
138.41.725.69
149.51.805.97
1510.61.856.13
1611.71.876.18

6. 構造解析モデルと地盤ばね

躯体を平面骨組み構造としてモデル化し、地盤の相対変位を地盤の水平ばねを介して 強制変位として作用させます。これにより、各部材の曲げモーメント、せん断力、軸力を算定します。

6.1 水平方向の地盤反力係数

KH = KH0 × (BH / 30)^(-3/4) = 12.8 × KH0 × BH^(-3/4) = 12.8 × 8.96 × 2086^(-3/4) = 0.37 kgf/cm³ KH0 = (1.2 / 30) × μ0 × E0 E0 = 28 × N = 28 × 4 = 112 kgf/cm² BH = √AH = √435 = 20.86m = 2086cm

6.2 鉛直方向の地盤反力係数

KV = KV0 × (BV / 30)^(-3/4) = 12.8 × KV0 × BV^(-3/4) = 12.8 × 92.4 × 2480^(-3/4) = 3.4 kgf/cm³ KV0 = (1 / 30) × μ0 × E0 E0 = 28 × N = 28 × 50 = 1400 kgf/cm² BV = √AV = √615 = 24.80m = 2480cm

6.3 水平地盤ばね定数

KHi = Ai × KH KHi:各節点の水平地盤ばね Ai:各節点の分担面積 KH:水平方向の地盤反力係数
節点Ai(m²)KHi(tf/m)節点Ai(m²)KHi(tf/m)
10.1555.8101.10409.2
20.65241.8110.90334.8
31.00372.0120.60223.2
41.00372.0130.85316.2
50.90334.8141.10409.2
60.65241.8151.10409.2
70.50186.0160.85316.2
80.85316.2170.30111.6
91.10409.2---

6.4 地盤の相対変位

Di = Uhi - Uh17 Di:各節点の相対変位 Uhi:各節点の地盤変位振幅 Uh17:節点17の地盤変位振幅
節点x(m)Di L1(cm)Di L2(cm)
11.30.853.87
21.60.843.85
32.60.823.76
43.60.793.63
54.60.763.46
65.40.723.30
75.90.703.18
86.40.673.06
97.60.602.73
108.60.532.42
119.80.442.02
1210.40.391.80
1311.00.351.58
1412.10.251.15
1513.20.150.71
1614.30.060.25
1714.90.000.00

7. 地震動レベル1に対する検討

地震動レベル1に対しては、全断面有効として解析を実施し、曲げモーメント、せん断力、 軸力を算定します。その後、許容応力度法により安全性を照査します。

地震動レベル1 曲げモーメント図
地震動レベル1:曲げモーメント図

7.1 許容応力度

項目許容値備考
鉄筋の許容引張・圧縮応力度σsa = 2,000 kgf/cm²地震時割増あり
コンクリート許容圧縮応力度σca = 80 kgf/cm²地震時割増あり
コンクリート許容せん断応力度τca = 2.80 kgf/cm²地震時割増あり

7.2 L1応力度照査結果

断面NO.B(cm)H(cm)d(cm)配筋 M(tf・m)N(tf)V(tf)σcσs
1100120113D22@20052.027.939.2401871
290120113D29×8148.228.263.6742538
39010093D25×690.137.443.1802909
41006053D16@20016.011.413.5562711
510010093D22@20050.025.821.0532367
61008073D22@20015.032.811.723433
71006053D22@20016.615.111.8431410
810010093D29×13178.9245.8104.11012745
9909083D29×1197.1204.062.4781637
10808073D25×1169.6160.939.081766

L1照査結果

地震動レベル1に対する発生応力度は許容応力度以内であり、安全性が確認されます。

8. 地震動レベル2に対する検討

地震動レベル2に対しては、地震時に構造物の変位が降伏変位を超えることを許容し、 部材降伏後の剛性低下を剛性残存率として考慮します。

8.1 剛性残存率

剛性残存率 = EIeff / EIg EIeff:部材の有効剛性 EIg:部材の全断面剛性

8.2 破壊モード照査

γi × Vmu / Vyd < 1.0 Vmu = Mu / la = Mu / Md × Vd γi:構造物係数 Mu:部材の曲げ耐力 Md:部材の設計曲げモーメント Vd:部材のせん断力 Vyd:部材の設計せん断耐力 la:せん断スパン = Md / Vd

8.3 設計せん断耐力

Vyd = Vcd / γbc + Vsd / γbs Vcd:コンクリートのせん断耐力 γbc:コンクリートの部材係数 = 1.3 Vsd:鉄筋の受け持つせん断耐力 γbs:鉄筋の部材係数 = 1.15

8.4 曲げ破壊モードの場合の安全性

次のいずれかを満足することを確認する。 ① Vyd / Vmu ≧ 2.0 ② γi × μrd / μd ≦ 1.0 μrd:部材の設計塑性率 μd :部材の設計靱性率

8.5 L2安全性照査結果

断面NO.MdNdVdMuVmuVydγi・Vmu/Vyd破壊モードVyd/Vmu靱性
168.136.846.289.560.7138.90.437曲げ破壊2.29OK
2189.468.5104.4196.9108.6373.30.291曲げ破壊3.44OK
396.372.161.497.562.2221.20.281曲げ破壊3.56OK
421.035.817.321.817.969.00.260曲げ破壊3.84OK
555.412.830.264.235.0116.20.302曲げ破壊3.32OK
627.939.19.061.919.997.80.203曲げ破壊4.92OK
734.724.828.838.531.973.60.434曲げ破壊2.30OK
8270.0250.0191.7272.5193.4427.10.453曲げ破壊2.21OK
9190.2201.8120.7202.5128.5291.10.442曲げ破壊2.26OK
10125.5166.571.4140.079.6182.50.436曲げ破壊2.29OK

L2照査結果

全部材で曲げ破壊モードとなり、Vyd/Vmuも2.0以上を満足します。 靱性の検討結果もすべてOKであり、地震動レベル2に対する安全性が確認されます。

9. 実務上の整理ポイント

設計条件の整理

地盤条件、内水位、土被り、上載荷重、材料条件、配筋条件を正確に整理することが、 応答変位法による照査の前提となります。

地盤変位と動水圧

地震時は躯体慣性力だけでなく、地盤応答変位と内水の動水圧が重要です。 水槽構造物では荷重条件の設定精度が照査結果に大きく影響します。

L1・L2の使い分け

L1では主に許容応力度照査、L2では剛性低下、破壊モード、せん断耐力、 靱性を含めた照査が必要になります。

LANDPLUSの対応範囲

当社では、浄水場・配水池等の池状構造物について、設計条件整理、耐震解析、 L1・L2照査、断面力整理、補強検討、報告書作成まで、実務に即した形で対応可能です。

※本ページに掲載している図表・計算例は、掲載許可を得た資料をもとに、著作権その他の権利関係に配慮したうえで、技術説明用に再構成したものです。

池状構造物の耐震解析・L2照査に対応します

浄水場・配水池・沈殿池・ろ過池等の池状構造物について、 設計条件整理、応答変位法による耐震解析、動水圧の設定、 L1・L2照査、補強検討、報告書作成まで対応可能です。

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